AIが決めた恋
僕達は、来た道を戻り、人気の少ない体育館裏へ来た時、立ち止まった。

「湖川さん──」
「…どうして…?」
「えっ…?」
「私、あの人達に何かした覚え無いよ…。それなのにどうして私はいつも男子から嫌なことをされるの…!?」

湖川さんと目が合わない。
いや、確かに今までも目が合った回数は少ないけれど、今はいつもと違う。
いつもは、恥ずかしそうに目を逸らしながら話しているが、今は明らかに焦点が合っていない。

「私、この高校に入って、何かが変わったのかと思ってた。皆と少しずつ仲良くなれて、もしかしたらまだ希望は残っているのかもしれないって。でも、違ったんだ。お兄ちゃんも真島くんも佐倉くんも、皆、私のことが嫌いなら、私に優しくしないでよ!」
「そんな…。皆、嫌いじゃないよ。」
「嘘!もうやめてよ。どうせいつか嫌いになる。中学の時だって、そうだったんだから!」
「湖川さん、落ち着いて。」
「何度も死のうとした。結局できなかったけど。でも、あの人達が言ったように、もっと前に死んでいれば良かっ──」
「湖川さん!!」

僕は彼女を抱きしめた。

「離してよ!」
「離したくないよ。今、離したら、湖川さんが本当にいなくなってしまう気がするから…。」

きっとここにいるのが僕じゃなくて真島くんや裕さんだったら、もっとより良い方法で、彼女の涙を(ぬぐ)うのだろう。
でも、僕にはその方法が分からない。だから、こんな強引なやり方でしか、彼女の涙を止められないんだ。
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