AIが決めた恋
「佐…倉…く…。」
「うん。大丈夫。無理に喋らなくていいよ。」

腕の中から、彼女のすすり泣く声が聞こえてくる。

「あんなの、気にしなくていい。」
「でも…。」
「だって僕は、湖川さんが生きていてくれて嬉しいから。」
「そんなわけ…。」
「本当だよ。例え他の誰もがそう思っていなかったとしても、僕は湖川さんが生きていてくれて嬉しいと思ってる。これからも、ずっと一緒にいて欲しいくらいに。」

入学当初、僕がクラスメイトに嫌なことを言われた時だって、遊園地の観覧車の中でだって、湖川さんは僕を救ってくれた。
だから今度は、僕が彼女を救いたい。

「いくらでも泣いていい。その後で、笑ってくれたら、僕はそれで嬉しいんだ。」
「佐倉くん…、私──」

その瞬間、彼女が僕の腕の中で崩れ落ちた。

「湖川さん…!?」

顔を見ると、目を閉じている。僕は慌てて彼女の額に手を当てた。

「熱い…。湖川さん、聞こえる!?」

返事は無い。
僕は彼女をお姫様抱っこすると、そのまま保健室へと向かった。
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