AIが決めた恋

君は一体…

「まさか、本当に迷子になっているなんて。驚いたよ。」
「ここへ来るのは初めてでして…。」

私は結局、佐倉くんに事情を話して、時計台へと案内してもらうことになった。
16歳という年齢で迷子になってしまったことも恥ずかしいが、それを他人に知られたということが、更に恥ずかしい。これが佐倉くんではなくて、他のクラスの男子だったら、確実に馬鹿にされていただろう。

「このショッピングモールは広いから。迷子になってもおかしくないよ。」
「そうなんですか…。」

それから(しばら)く、私達は無言で歩き続けた。いや、暫くといっても、ほんの1分程だろう。でも、私にはとても長い時間に感じられた。
よく考えたら、私はお兄ちゃん以外に、これほど長い時間、同い年くらいの男の人と2人きりで歩いたことがなかった。初めてのことは緊張する。色々聞きたいことがあるのに、どう言葉にしたら良いのか分からない。

「その服、とても似合ってるね。」

不意に佐倉くんがそう言った。

「えっ…。」

私は何と答えたら良いのか分からず、無言で俯いてしまった。

「ご、ごめん。気持ち悪かったよね。」

佐倉くんは慌てたように早口でそう言った。

「いえ。違うんです。…あの、お世辞ですよね?私にスカートとか似合わないので…。」

私がスカートを穿いて、それを肯定してくれたのは、今までにお兄ちゃんだけだ。そして、お兄ちゃんは少し変わっている。変わっているから似合っているように見えるだけで、普通の人からしたら、やはり私にはスカートが似合わないと思うはずだ。
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