AIが決めた恋
「あ、もしもしお爺様?うん。うん、そう。愛だよ。うん。うーんとね、高校の屋上の鍵を開けて欲しいんだけど。うん。うん。本当?ありがとう!じゃあね〜。」

それだけ言うと、影石愛は電話を切った。

「交渉成立!」

彼女はニコッと微笑んだ。

「さ、行こう!」

そう言って彼女は浮き足立った様子で廊下に出て、階段を上り始める。

「はぁ。」

俺は、彼女に見せつけるように溜息をつく。
そして、彼女の数歩後ろを歩く。

「ねえ、どうしてそんなに後ろを歩くの?」
「隣を歩きたくないからだ。」

俺は正直に答える。
教室から屋上まで、少しの距離ではあるが、その少しの距離でさえ、彼女の隣を歩きたくはない。

「だったら前を歩いても良いのに。」
「何を言いたいのか分からないが、前も歩きたくない。」
「どうして?」
「お前を警戒しているからだ。」
「へえ。藍ちゃんと同じこと言うんだ。」

“藍”という言葉に、自然と反応してしまう。
今このタイミングで、影石愛から、その名前が出るということは…。やはりこの2人は何かある。幼馴染みという関係以外の何かが…。

「前は隣を歩いてたのにね。」
「昔の話だろ。今更掘り返すなよ。」

もう思い出したくもない。
彼女のことが本気で好きだったのも、付き合っていたのも、もう昔の話だ。今は違う。
全て、忘れる為に、この高校へ来たのに。

「昔の話…か。」

彼女がぽつりと呟いた。
そうだ。もう、“昔の話”だ。
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