新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「もしかして、ベッドに上げたのは?」
「俺しかいないだろう?」

 うわーっ、彼が私を抱き上げてベッドに寝かせたのだ。

「ね、寝顔っ」
「見たに決まっているだろ。あんなに爆睡するんじゃ、厩舎の入口で眠るなんてもってのほかだな。なにをされても気づかない。それより、腹が減っているだろう? 食事にしよう。後で会わせたい人がいる」

 瑛斗さんはソファから立ち上がり、石造りの手すりのそばに設置されたテーブルの方へ私を誘導する。そして椅子を引き、座るよう促した。

 人に椅子を引かれたことなんて初めてだったから、鼓動がドクッと跳ねてしまった。

 私を席に着かせた瑛斗さんは対面に腰を下ろす。

 テーブルの上にはミントブルーのマットが敷かれ、ナイフとフォークなどのカトラリーや数種類のグラスが用意されている。

 どうしてグラスが三つも……?

 不思議に思って目を向けていると、瑛斗さんが質問を投げかけてきた。

「なぜ硬い床に寝ていたんだ?」
「お布団に入るのはお風呂に入ってからと決めているんです。気持ちよく寝たいから」
「君は本当におもしろい。俺の周りには床で寝る女はいない」

 私はどこでだって眠れるんです!

 ばかにされた気がしてそっぽを向いた私の目に、清々しくてまるで絵のような景色が飛び込んできた。

 今になってようやくテラスからの景色を見られる。昨日は余裕がなかったからな。

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