御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
美砂はゴールドのマーメイドライン、私はパールホワイトのAラインのドレスに決め、当日朝の予約を入れた。

美砂は運転手さんに連れて来てもらっていたため、帰りは私をマンションの前まで送ってくれた。
中を見たいと車内で騒がれたが、ここは透さんのお家だから美砂といえど勝手に上げるわけにはいかず、「今度ね」と断った。

手を振って車を見送り、さて中に入ろうと踵を返すと。
受付のコンシェルジュさんのブースに、若い男性がきていた。

三十代くらいだろうか。体にフィットした上質なスーツにうちの父も好んでつける高級ブランドのネクタイを締めている。
どこかのお部屋のゲストさんだろうか。

少し、透さんに似ているような……。

「申し訳ございません。三鷹様はただいまご不在です」

えっ! 透さんのお客様?

エントランスで足を止め、彼らの会話に聞き耳を立てる。

「そうですか……。会えると思ったんですが。出直します」

男性はとても残念そうに目尻を下げると、トボトボと肩を落としてこちらへ戻ってくる。
なにか大切な御用だろうか。私は一緒に暮らしているとはいえ、まだ奥さんでもなんでもないから声をかけていいのか分からない。

ああ、でも私がお留守番をすべきところを出かけてしまったわけだし……。
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