御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
『手紙を書けば読んでくれるかもよ』

姉の顔はパッと明るくなった。私もつい顔が緩む。
しかし彼女は、レターセットを私に返してきた。

『沙穂ちゃん、ナイスアイディア! さっそく、書いてくれる?』

え?

『そんな。お姉ちゃんが書かないと……』

『無理だよぉ。私は文章考えるの苦手だもの。沙穂ちゃんは得意でしょう? ねぇお願い』

それじゃ意味ないって……。

『お願い! ……だめ?』

私がその顔に弱いって知ってて、んもうーー!

『……分かったよ。これっきりだからね?』

ついに降参すると、彼女の顔はさらに明るくなった。

『ありがとう!』

美砂はうれしそうに部屋から出ていき、私の手には桜のレターセットが残された。せめて一緒に考えてくれたらいいのに、美砂ったら私に全部押し付けるつもりだ。

こうなったら後回しにせず、さっさと書いてしまおう。便箋を一枚出し、机の開いたスペースに置いてみる。
ペンをかまえ、一行目に【とおるさんへ】と書いた。
< 23 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop