御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
しかしいざ考えるとなると、かなり神経を使う。なにしろ美砂のふりをして透さんに好かれなければならないというミッションだ。
これで美砂が嫌われでもしたら私の責任になるし、失敗できない。

【はじめまして。突然のお手紙で驚かせてすみません。私は同じサークルの乙羽美砂と申します】

定例の一文でさっそくペンが止まる。

どうしよう。
いきなり一目惚れしましたと書いても警戒されるだけ。慎重な人のようだし、まずはこちらの自己紹介から始めようか。
実家は『オトワリゾート』だと早い段階で伝えた方がいいよね。秘密があったら仲良くなれないし。

次は?

女子校育ちで、あまり男性と話したことがなくて、それでも話してみたくて……。素直にそう白状しよう。

趣味はヴァイオリン。習い事はお花と英会話に通っていて、休日はお菓子作りにハマっている。あ、でも今はーー。

【ーー今は内部進学のための勉強中なので、なかなか時間がとれない毎日です】

……あれ? 待って待って。いけない、これは私の話だ。お姉ちゃんになりすまして書かなきゃならないのに。
もっと気を付けないと。

神経をすり減らして綴った文章は便箋二枚に及んだ。
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