御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
俺は手紙をやめてから論文、就活、実家への説得と本格的に忙しくなり、美砂と会う時間をとれず、同じく沙穂ちゃんにコンタクトをとるのも難しくなった。
卒業してからもそれは変わらず、コンサルタントとしての目まぐるしい毎日に追われ続け。

しだいに、もう彼女をあきらめようと考えた。

和やかに暮らしている沙穂ちゃんときちんと付き合える立場にない。彼女にはもっと相応しい人がいる。
そう自分に言い聞かせ、忘れようとしたのに。

仕事で疲れきったときや、忙しさでどうにかなりそうなとき、いつも支えになったのは彼女からの手紙だった。
読むと癒され、心にしみ渡り、そして何度でもあの日の沙穂ちゃんがよみがえる。

誰を紹介されようと、この気持ちは満たされなかった。七年も手紙を手放せず、彼女を想い続けるばかり。

そんな中で、俺がオトワリゾートのプロジェクトを担当することになったのがつい最近の話。乙羽社長に会い、美砂と再会して、まさかの沙穂ちゃんとの婚約を打診されるという展開になった。
嘘みたいにうれしかった。手紙の件をきちんと話して、俺自身を受け入れてもらいたい。
今度こそ沙穂ちゃんが欲しい。

『姉と結婚してもらえませんか』

……それがどうしてこうなったんだ。
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