嫌いなあいつの婚約者!?
「これ、学校?」

「そうだけど、いつも通ってるじゃないか」

 涼は、怪訝な顔をしてこっちを見た。

 あくまで私はずっとこの世界にいる、その事実をいつも忘れないようにしないと。

「あ、うん。そうだよね」

 だけど、いきなりこんな知らない世界に来て、日常を送れというのは、簡単なことじゃない。

 それにしても、本当に学校かと疑いたくなるような、まるでフランスにでもあるお城のような建物が目の前にある。

「さあ、行こう」

 車から降りて歩きながら周囲を観察すると、生徒一人一人に気品が感じられて、今までいた世界と比べてこうも違うのかと溜息が出そうになる。

 お金持ちの学校に通ってみたいなんてことを考えたときはあるけれど、まさか実際にこんな風になるとは思いもしていなかった。

 ていうか、この世界は一体なんなの?

「ご機嫌よう、桜」

 歩いていると、後ろから名前を呼ばれて振り返ると杏里がいた。

「杏里」

「今日も涼さんと一緒なのね。流石婚約者」

 そうだった。この世界に来て1番突っ掛かっていたことが、私と涼が婚約者だということ。

 なんでよりによってこんなやつと婚約者なのかと、昨日までの生活でなら絶対に有り得ないのに。

「さあ、行きましょう。太陽が眩しいわ」

 涼だけじゃなく、杏里までお上品になってしまっている。

 ということは、やっぱり私自身もそんな風に振る舞わないと浮いてしまうのでは。
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