夜空に見るは灰色の瞳
心の片隅で誰かが、やめろ耳を貸すな!と叫んでいる。
けれどその反対側の隅では、お金をかけずにマットレスを新しく出来るなんて最高ではないか!という声もする。

心の真ん中にある天秤は、右に左にとグラグラ揺れていた。


「……魔法使いの魔は悪魔の魔」


思わずポツリと零したら、男が何を言っているんだとばかりにため息をつく。


「全く叶井さんは、考え方が前時代的過ぎて困りますね。確かに昔は、悪魔と契約を交わしたことによって不思議な力を授かったんだなんて、魔法使いを忌み嫌う人達もいたみたいですけど、それは大きな誤解です。この力は、血によって代々受け継がれてきたものであって、そこに悪魔の干渉は一切ありません。まあ、黒魔術となるとまた話は違ってくるんですけど」


そんなに深い考えがあっての発言ではなかったのだが、このままだと面倒くさい話が始まってしまうのだろうか。いや、もう始まっているか。
これは、今からでも正直に言うべきだろうか。
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