夜空に見るは灰色の瞳
もちろん、休憩時間に入ったところで一度は解放されたのだ。
その時既に疲れ切っていた私は、三永ちゃんと二人で移動距離が少なくて済む社内の食堂に行ったのだが、何を食べようか迷っていたところで主任から電話で呼び出され、結局そのままお昼を食べ損ねた。

でも何も食べないと流石に午後は乗り切れないと思ったので、こんな時のために鞄に仕込んでおいた栄養補助食品でもあるビスケットを口に放り込みはしたが、たったそれだけで乗り切れるような午後ではなかった。

正直、午前より午後の方が主任の人使いは荒かった。

とりあえずどこでもいいので、もう床でいいので一旦座り込みたいのだが、そんなことをしたらもう二度と立てなくなりそうで、なんとかその欲求を抑えてロッカーを開ける。

走り回って酷使した足はもちろん痛いが、段ボールやら分厚いファイルやらを抱えた腕も痛い。
その痛みを堪えてよろよろと体を動かしていると、「そうだ叶井さん」と声が聞こえ、見れば、三永ちゃんが何やらごそごそと鞄をあさっていた。


「こんなんじゃ何の足しにもならないかもしれませんが、よかったらどうぞ」


そう言いながら近付いてきた三永ちゃんは、私の手を掴んで自分の前に持ってくると、上向きにした手の平に零れんばかりに何かを乗せた。
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