夜空に見るは灰色の瞳
「叶井さんの寝不足の原因は何なんですか?悩み事ならお話聞きますよ。やっぱり主任ですか!」

「ありがとう。でも、大丈夫。ちょっと寝付きが悪かっただけだから。あと……主任の話をする時は、もう少し声を小さくしないと」


この場に主任の姿はないけれど、どのようにして本人の耳に入るかはわからない。
けれど三永ちゃんは私ほど主任を恐れてはいないので、「気を付けまーす」の返事も、本当に気を付けてくれるのかどうかかなり怪しい響きがある。


「でも、ほんとにそれだけですか?それだけで、目の下にクマが出来るほどの寝不足?」


あっ、疑われている。
でも本当の理由は説明出来ないし、他に上手い誤魔化し方も思い付かないので、もうこれで押し通すしかない。

もしくは、今すぐ話題を変えるか――。


「そういえば三永ちゃん、先週公開された実写映画、観に行く予定だって言ってたよね。えっと、三永ちゃんが前に好きだって言ってた……あの、何だっけ。学園物なんだけど、ちょっとファンタジー要素もある少女漫画が原作のやつ。もう観に行った?」

「……ああ、転校生が実は異世界人だったっていうあれですよね。行きましたよ」
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