酔える声の裏側〜イケメン声優に溺愛されちゃった!?〜
「俺のマネージャーになれよ。」

...。

「はぁ!?!?
絶対無理!!!」

気をつけてはいたけど、いきなりそんなこと言われて、大きな声で拒否ってしまった。

そもそも、こいつ私と佐伯さんの関係が分かった上で言ってるわけ!?!?

「なんでだよ。
今から衰退してく奴より、ノリにのってる俺の方が絶対今後何事も有利に決まってるだろ」

「佐伯さんは衰退なんかしません!!
カッコいいですし!!」

「顔出さないなら意味ないだろ。
それに顔なら俺の方がいい。」

「そんなわけありません、違います。」

「おい。あえて冗談言ってるとしても今の否定は許容できないぞ!」

「本気で佐伯さんの方がカッコいいと思います。俳優だからってそこは譲れません!!

マネージャーの件は当然お断りですしね!」

「なんだとてめー...。」

「もう余計なこと言わないでください
さようなら!!」

「ざけんな...おい、まつり!!」

...。

なんでずっと名前呼んでんの...?

あーうざい。

と、思ったら。

あ...。

「佐伯さん...。」

駆け寄るけど、なんだか怒ってなさそう...?

「また御園ユウトが...。」

「きいてたよ。」

「あの、絶対私にはそんな気ないですから。」

「うん、分かってる。
でも...。」

え、

悲しそうな顔...?

「確かに、君に敵うことはないよね。」

「え...?佐伯さん、そんなこと...。」

「半分は、間違えてないよ。
まつりにとってどちらのマネージャーになるのがいいってことはね。」

「...違います、それは...。」

御園ユウトの方を見ると、彼は勝ち誇ったような顔で腕を組みこちらを見ている。

こいつほんとにやだ...。

「でも、君にはもう既に小野寺さんっていう素晴らしいマネージャーさんがいるよね?」

「別に...あんなやつ素晴らしくも何ともないし。ミスばっかで低能。」

「君はそう思ってるかもしれないけど、
君がこうしてテレビに出て活躍できるのは、スケジュールを管理してくれたり、事前に打ち合わせをしてくれたりするその人のおかげなんだから。」

「負け惜しみに説教かよ。」

「事実を言ってるだけだよ。
君にあの人の仕事を否定する資格はない。そして、まつりの意思を尊重すべきだと思う。これは俺の都合で言ってるわけじゃないよ。」

「...。」

「個人的にだけど、君には、人に対する配慮が欠けてるんじゃないかなと思うよ。
実益のための表向きだけじゃなく、皆に感謝を持って接していかないと、

せっかく築いたものも、ちょっとしたことで壊れてしまう。

そうしたら、
君こそ、衰退してしまうんじゃない?」

「そんなわけ...。」

「皆に認められているのは仮面を被った自分だけで、本当の自分を誰も受け入れてくれず気づいたら独りなんてことも、
よくあることなんだ。

君も確か子役から頑張っているし、薄々勘づいてはいるんじゃないかな。

芸能界って、案外寂しい職業だなって。」

しみじみとする...。

「それでもやっぱり、それは俺のわがままなんだけどね。」

「結局お前の都合なんじゃねーかよ。」

「まあね。少しは。
本当に好きになった人と引き離されてしまうのは、俺にはつらい。」

「...。」

御園ユウトは、不機嫌さでやりきれないような顔をして、

「ちっ、馬鹿どもは勝手にしろ。」

と、吐き捨て去っていった。

...朝からなんか嫌な気分。
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