こんぺいとうびより
「衣緒?入っても大丈夫?」

「うん。」

控え室に鈴太郎が顔を出す。

「やっぱりそのドレスもよく似合ってる。なんか妖精みたい。衣緒、お色直しはなしでいいなんて言ってたけど、することにして本当に良かったな。」

くすんだ淡いグリーンの柔らかい素材のドレスに、アップにしていた髪をほどいて生花で出来た花輪をつけた衣緒は可憐で美しかった。

「そ、そうかな・・・?」

そう言われて目の前の大きな鏡に映る自分の姿にちらりと目をやるが、なんだかくすぐったくてすぐに目を逸らした。

「さっきの白いドレス選ぶ時、『どんなに素敵なドレスでもどうせ着るのは私だし、どれでもいいよ。』って言われた時はつい苛立っちゃったけど。」

鈴太郎はドレスを選んだ日のことを思い出してわずかに表情を固くする。

「・・・ごめんなさい。私、全然進歩出来てなくて・・・。」

衣緒はあの日彼が見せた悲しそうな顔を思い出して胸が苦しくなった。

「いや、仕事では前に比べたら自分に自信持ててるように見えるけど・・・。結婚式は親とか周りの人に感謝する気持ちでするけど、ドレスは自分が着たいもの選んでほしかったんだ。そういう衣緒の姿が見たかった。結果的には選んでくれて嬉しかった。」

「ありがとう、リンくん・・・。」

彼の言葉と(ほど)けた表情にジンとくる。

「他の人に見せたくないくらい綺麗だけど、だからこそ皆に自慢したいな。俺の自慢の奥さんだって。」

鈴太郎はそう言うといつものように照れて目を逸らす。

そんな彼を見るのが衣緒はたまらなく好きだった。

「リンくん・・・。」

つぶやいた名前に熱がこもる。

「俺にとって世界で一番綺麗なのは衣緒だ。それじゃ不満?」

衣緒はボッと瞬間沸騰したように顔を真っ赤に染めて首を横に振った。

鈴太郎がそんな衣緒に近寄り、彼女が映る鏡の中にも彼が現れた。
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