こんぺいとうびより
「・・・で、北岡、ぷるぷるしてるからキレるのかと思ったら葉吉さんの言葉に感激しちゃったみたいでさ、『葉吉さんが俺らにそんなに期待してくれてたなんて!やります、やらせて下さい!おい、頑張ろうぜ!』って最後は私の方見てやる気全開!って感じで言ったんだよ。ばっかじゃないの?信じらんない。」

「うるせーなもう!なんなんだよ、この無気力女。もっと仕事にやる気出せってんだよ。」

「うるさいのはあんたでしょ。仕事なんて最低限やって、もらえるもんもらってればいいんだよ。」

ぷいっと横を向く真海に悠馬の怒りが爆発する。

「ああん!?お前、彩木さんに頼りまくってて最低限もやってねーだろ!お前のそういう生ぬるい生き方本当気に食わねえ!どっかのお嬢様らしいけどさ、この温室育ちが!」

「お前って言うなって言ってるでしょ!この根性バカが!!」

「まあまあお二人ともせっかくこんな素敵なお店なんだから楽しく飲みましょうよ!あたし、ここめっちゃ来てみたかったんです。」

後輩の玉川璃子(たまがわりこ)が満面の笑みで言う。

「そうですよ。せっかく葉吉さんから『親睦を深めて来たら』ってポケットマネーから飲み代もらったんでしょ?」

隣の食品チームの新貝一直(しんかいかずなお)もヒートアップする二人をなだめるように言う。

「悪りーな、新貝。お前の分は俺が出すから、俺とこいつが二人で飲みに行ったことにしてくれ。」

「玉川ちゃんの分は私が出すから。島田くんも高津さんも既婚者だから誘いにくかったし、あんた達二人がいてくれたらなんとかなるかも・・・って。」

二人で飲むのが嫌過ぎた真海と悠馬は玉川と新貝を誘って、数ヶ月前に会社の近くに出来たばかりの全席個室の雰囲気の良い創作料理の店に来ていた。
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