お仕えしてもいいですか?
「靴を磨くのはそれくらいにして、たまには一緒にお話しでもしませんか?」
「話ですか……?」
「はい。あ、お酒を飲んでもいいかも……」
話がしたいと言われて、桜輔は目を見開いた。
木綿子がこんなことを言い出したのは彼女と主従関係を結んでから初めてのことだったからだ。
……嫌な予感がした。
最近の木綿子は、心ここにあらずといった状態で趣味の読書に身が入ってない様子だった。
何か言いたげに桜輔を見つめてはため息をこぼし、深入りを拒むように何でもないと言い張る。
(ひょっとして……この生活が嫌になって……)
桜輔に付き合わされることにうんざりしている。
だからこの関係を終わりにしたい。
もし、木綿子の口からそんなことを言われてしまったら桜輔は生きていけないだろう。
桜輔は青ざめながら頭を振った。