キミと、光の彼方へ。
「やっほー、お隣さん」

「はい...あっ......どうも...」


隣の彼に話しかけられてしまった。

やっぱりそうなるよね。

だって、あんな出逢い方して同じクラスで、しかも席が隣なんだもん。

気にならない方がどうかしてるくらいだ。


「今朝のケガ、今も何ともない?」

「大丈夫です......」


私が俯きがちにそう答え、立ち上がろうとすると、彼が体ごと私の方に向けた。


「桑嶋珠汐奈」

「えっ...」

「いやいや、はいって返事しろよ~。ん?てか、名前違ってる?」

「いや、あってますけど......」


あはは...。

まずいな、こりゃ。

面倒な人が隣になってしまったようだ。

苦笑いさえ上手く出来ていない気がする。

全身が硬直していても尚、助け船は流れてこない。

ただ耐えるしかない。


「俺は碧海帆栄(ほだか)。よろしくな、珠汐奈」

「み、珠汐奈......」


初回から名前を呼び捨てにするなんて、この人の距離の縮め方は、コミュ障の私には理解しがたい。


「もしかして、名前NG?」

「最初からはちょっと...」


正直に言ってみたけど、果たしてどう出る?


「んじゃあ、桑嶋は?それとも桑嶋ちゃん?桑嶋さん?」


桑嶋ちゃんって...。

そんな呼ばれ方したことないよ。


「普通はさん付けからなんじゃないんですか?」

「ふ~ん、そうなんだ」


そうなんだ、って何年生きてるの?

少なくとも16年以上生きてるよね?

この人...普通じゃない。

なんか私と感覚がズレてる。

馬が合う気がしない。


「んじゃあ、取り敢えず桑嶋さんで。改めてよろしく」

「よろしくお願いします」


よし、これで終了。

今度こそと椅子に手をかけるが......。


< 13 / 300 >

この作品をシェア

pagetop