キミと、光の彼方へ。
「あっ...」


彼の手が伸びる。

私の心臓がとくんっとなった。


「頭に埃ついてた」

「あっ...ありがとう...」


一瞬なのに、こんなに胸が騒がしいのは、きっと朝あんなことがあったからだ。

引き寄せられた時にふわっと香った少し甘くて爽やかな香りが、私の半径1メートルに今も存在してしまうからだ。

これは錯覚。

こんな感情は幻で、すぐに消える。

消えてなくなる。


「うわっ、やっべ。行かねえと」


突然慌て出す碧海くん。

一体どうしたんだろう?


「俺、これから部活。じゃ、桑嶋さん、また明日」

「あっ...バイバイ」


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