キミと、光の彼方へ。
「珠汐奈、大丈夫かい?」

「ご心配をおかけして、すみませんでした...」


私がそう言うと、瀬代さんは私の肩に優しく手をのせた。

視線が交錯し、慌てて反らしたけど、瀬代さんの瞳は真っ直ぐ私を捉えていた。

そして、優しい目付きだった。

その瞬間、懐かしい父の面影と重なった。


「心配させてくれてありがとう。父親修行はまだまだ続きそうだけど、よろしくね」

「瀬代さん...」

「珠汐奈がお父さんって心からそう呼んでくれるその時まで、僕諦めないから。珠汐奈とちゃんと1つの家族になりたいって思ってるから」


瀬代さんの思いがじわじわと伝わってきて急に右手が痺れだした。

こんなに心が揺さぶられる日は一体いつぶりだろう。

それくらい、忙しく心が動き、休む暇もなく、次の課題を与えてきた。

私にはなんとなく見えた気がした。

私がやるべきこと、私が乗り越えなければならない壁。

それらは、私の目の前にしかない。

少しずつでもいい。

やるべきことをやろう。

壁に手をかけて上っていこう。

少しずつの努力がやがて大きな力に変わると信じて、もう一度頑張ってみよう。

私のペースで少しずつ、少しずつ。

その果てで光を掴めると信じて。

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