二人の距離~やさしい愛にふれて~
家族の存在
「一応成人してます。ビールが一番好きっす。」

ニカっと笑う恭吾を見て誠一は小さく噴き出した。どう見ても子供のような顔をしているのにしたり顔をしているのが可愛くも見えておかしかったのだ。

「そうか、てっきり理花と同じ年かと思っとった。」

「はははっ、確かにそうだな。恭吾はいくつ?」

「俺は二十歳っす。陽斗さんは?」

「俺は24。理花と5こ離れとるんよ。大学卒業して税務署で税理士しよるんよ。」

「へぇ、すごいっすね。頭いいんすね!お父さんもお堅い仕事してそう。」

誠一をキラキラした目で見る。

「いや、いや、市役所でただの事務をしよるだけよ。」

「公務員っすか、俺の周りにはどっちもいないっすよ。俺は機械系の設計を勉強してます。いつか何か作る人になりたいんすよ。」

「それは将来楽しみだな。しっかり勉強してすごいものを作ってくれることを期待してるよ。」

誠一はビールを飲んで久しぶりに気持ちが高揚していた。
誠一も陽斗も理花の事件からお酒は全く飲んでいなかったのだ。そしてこんなに人と楽しく話をするのも久しぶりだった。

「恭吾のお母さんは確か看護師さんやったな?理花が入院してた病院の。」

「はい、俺が小学生の時に学校に行って資格を取ったんすよ。」

「すごいな。母は強しだからな。一人で君を育てながらだから大変だったろうね。」
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