二人の距離~やさしい愛にふれて~
「は?彼女いなくても付き合わねぇよ。ってか今は誰とも付き合う気分じゃねぇ。」

恭吾はしつこいまりあに嫌気がさし、ため息をつく。

「いいんじゃねぇの。お試しでいいんだろ?本気になれなかったら別れればいいんだし?」

由彰が目の前に立っており、まりあとの会話を聞いていたらしい。

「は?頭おかしぃんじゃねぇの。何の感情も湧かねぇよ。」

由彰の突然の提案に恭吾はイライラが増す。

「だって前までは誰でも良かっただろ?まりあちゃんは好きじゃなくてもいいって言ってんだし、癒やしてもらえばいいじゃん、ストレス解消!」

「えっ?好きじゃなくてもいいわけじゃないけど付き合ってみたら好きになるかもじゃない?私が癒やしてあげる。」

由彰が味方について大胆になったまりあは腕を絡め、胸を押し付けて来た。
恭吾はまた小さくため息をつくと腕を引き抜こうとするがまりあががっちり掴んでおりなかなか抜けなかった。

そんな恭吾たちを見ておかしそうに笑うと、由彰は「じゃあ帰るわ。」と片手を上げて歩き出す。

「ヨシっ!お前を待ってたんだろ?」

由彰の背中に向かって叫ぶも振り返ることなく去って行った。

「ヨシくんに振られちゃったね。じゃあ今から暇ならどっか行かない?あっ、私の家でもいいよ?こう見えて料理もできるし!」

恭吾の腕をがっちりと掴んだまま得意気な顔をしている。

「俺はお前を好きじゃないし、たぶんこの先も好きにはならないと思う。」

恭吾は諦めたような表情で言う。

「そんなのわからないじゃない。とりあえず始めてみよう?」

上目づかいで言ってくるまりあに何の感情も湧かないまま恭吾は「わかった。」と答えた。
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