二人の距離~やさしい愛にふれて~
◇◇◇

その頃理花は恭吾と一緒に過ごした街の駅に降り立っていた。
久しぶりに見る景色や匂い、人の多さに当時のことが嫌でも思い出される。

理花は手に汗が滲み出るのを感じながら拳を握り歩き出した。
遠目から一目恭吾の姿を見てすぐに帰るつもりで来た理花は駅に着いて初めてどこに恭吾がいるのかわからないことに気づいた。
どこの大学に通い、どこでアルバイトをして家はどこなのか全く知らなかったのだ。

「いつも家に来てくれてたからなぁ。私って何にも知らなかったんだ…」

そう呟きながら理花の目は涙でいっぱいになる。
それでもこのまま帰る気は起きずにふらふらと改札口へと歩き続ける。

駅から出た理花は以前一度だけ恭吾に連れてきてもらったゲームセンターに来た。
何で遊ぶ訳でもなく一つ一つゲーム台を見て回る。二人で来たのはもう一年以上前で一緒に遊んだゲームはあまり残っていなかった。

入り口付近に設置されているクレーンゲームも中の景品は目新しいものばかりで理花が大切に持っている猫の人形ももうなかった。

理花は恭吾との思い出が消えて無くなるような物悲しい気持ちになりクレーンゲームの前で涙を流した。
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