二人の距離~やさしい愛にふれて~
やさしい愛
買った服を着ると、理花と恭吾は新幹線に乗り理花の実家へと向かった。

「なんだかドキドキする。家に帰るだけなのに。」

理花が胸に手を当てて言う。

「俺も久々にお父さんたちに会うと思うと緊張する。」

二人は汗がにじむ手を握りあい、体を寄せ窓の外を眺めた。
恭吾は会えなかった日々を埋めるようにどう過ごしていたか知りたがった。
理花は退院し、通院も現在では月に1回になっていること、一人で出かけることが多く、以前一緒に行った図書館によく行っていることなどを話す。

いつも一人で乗っているときはすごく長く感じていた時間も理花と一緒だと早かった。

二人はホームに降り立つと自然と手を繋ぎ、改札を出る。

「もう昼過ぎちゃったな、お腹すかないか?」

「ううん、新幹線の中でおにぎり食べたし私は…。あのっ、もうちょっと二人で…いたいな…。」

「ははっ、俺も今思ってたとこ。どうする?カフェにでも寄るか?」

理花は首を横に振り、俯く。

「どうした?何かあるのか?」

恭吾は理花の顔を覗き込むと真っ赤になっていた。

「あのね、恭ちゃん、私今…恭ちゃんから買ってもらった服着てるよ?」

今にも消え入りそうな声で理花は囁く。

「へっ?それって理花、意味わかって言ってんの?」

理花は恭吾の目を見て頷いた。

「やっ、でも…朝は嫌がってたし…。それはまた追々…。」

「違うの、あれは…急だったからで、心の準備が…。」

「ハハハッ、そうだろ?急がなくていいよ。本当に準備ができたときにしよ?」

理花は俯き気味で恭吾の洋服の裾を掴む。

「ううん、もうできた。この服に着替えるときに…。」
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