二人の距離~やさしい愛にふれて~
金曜日の午後、恭吾は大学の講義が終わると急いで家に荷物を取りに帰った。
荷物を持つと逸る気持ちを抑えて空港へ向かう。
今日はとりあえず理花の入院している病院へ行き、主治医との面談の予定だ。
そして、きちんとした形で理花の両親に初めて会う。
服装のことで悩んでいたが真から恭吾らしい恰好でいいよと言われ、崩れすぎずかしこまり過ぎない服装にした。

恭吾は飛行機に一人で乗るのは初めてだった。だが、緊張しているのはそれだけのせいではなかった。
空港には陽斗が迎えに来てくれることになっており、そのまま理花の両親と合流し病院に行くことになっている。
電話で話したときは謝られたが、やはり自分も理花に手を出した一人であり後ろめたかった。
理花に会いたいと思っているのにいざ会うとなると自分に何ができるのか、何もできないのではないかという不安もあった。

飛行機から降りるとわかりやすいところで陽斗が待っており、すぐに合流できた。
空港から理花の入院している病院までは車で1時間ほどだった。
その間、陽斗とは会話が途切れることなくいろいろと話をした。理花の両親のことや理花が猫の人形を離さずずっとそばに置いていることなど、気付くと両親が待っている食事処に到着していた。
恭吾は夕方の飛行機だったから食事を一緒にと誘われていたのだ。
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