二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾はふと、なぜ自分にだけ理花はいろんな表情を見せるのだろう?と疑問に思った。
家族仲が悪かったとは思えず、自分とは短い時間しか一緒にいなかったのになぜ?
でも今それを聞くと理花が心を閉じてしまう気がして聞けなかった。

レンジは2分ほどで終わり、すぐに病室に戻る。
戻ると恵子が作ってきてくれたお弁当をソファの前にあるテーブルに広げていた。

「おかえりなさい。恭吾くんは何が好きかわからんかったけん適当に作ったんよ。お口に合うといいけど…。理花も、好きな煮物も入れとるよ。」

恵子の声は微かに震えていたが、涙が流れないように必死で笑っていた。
その顔を見た理花は一瞬泣きそう表情をするが恭吾の腕にしがみついて顔を隠してしまった。

「ありがとうございます。俺何でも食べます。」

みんなでテーブルを囲むと理花は俯いたまま恭吾の横の椅子に座った。

「お粥っていうかお茶漬けっぽくなったけど…熱いからな、気をつけろよ。」

そう言いながら恭吾は海苔をちぎってご飯の上にのせる。
理花は嬉しそうに受け取るとスプーンで一口食べようとして、皆が自分を見ていることに気づいた。

「見、見られたら…食べれん…。」

慌てて食べるのを止めて小さな声で言う。
それを少し離れたイスで見ていた草野が声を上げて笑った。

「確かに、これじゃあ誰でも食べれないかもね。」
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