冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
今日から帰宅する場所がここになるのなら、湊征の家はまた掃除してこなくちゃならない。

特に弟は今一番忙しい時期だ。いつ頃帰宅するかもわからないので、食材とゴミなどはどうにかしないといけないだろう。

お洒落な淡い橙色のダウンライトが照らす天井を、ぼんやりと見つめながら考えていると、「考えごとか?」と扉の方か宗鷹さんの声が聞こえた。

部屋に入ってきた彼は、左手に硝子製の耐熱ボウルらしきものを持っていた。中では透明な水が揺れ、白いタオルが揺蕩っている。
何に使うんだろう?

「はい。あの、隣の家が停電した時なんですが、ご飯を作っていて。その食材たちは、どうなったのかなぁと」

不思議に思いながら、長い足を捌いて側へ来る彼を目で追いながら話す。

「コンシェルジュが呼んだ櫻衣家のハウスキーパーが、片付けてくれたはずだ。冷蔵庫以外の全ての電気の電源は落としてあるし、安全面でも心配はいらない」

「そうでしたか」

どうやらこのマンションではセキュリティー強化の面から、個人宅のハウスキーパーもデータ登録されているらしい。
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