冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
呼びかけられて、おっかなびっくりしつつ視線を下すと、こちらを見つめる凛然とした美貌の彼と視線がかち合う。

「あっ、ごめんなさい。皺になっちゃいますね」

「そんなのはどうでもいい。そうじゃない、そうじゃなくてだな。……はあ」

なんだかわからないが、盛大なため息をつかれた。
そりゃそうか。これじゃあまるで子守だ。お仕事でお疲れ様のところ、本当に申し訳ありません。

心の中で土下座した私に、彼は「君なあ、この状況をどう堪えろと」と苦しげに眉を寄せ、肩を落とすと、再び大きなため息を吐き出した。



キングサイズのベッドの上に私を降ろして横たえた彼は、ふわふわの羽毛布団を肩まで包むように厳重に掛けると、「少し待っていてくれ」と言い残して部屋を出て行った。

ぬくぬくのベッドの中でようやく、ふうと一息つく。
今日は、また昨日とは違った方向で、とっても目まぐるしい一日だったように思う。

……そういえば、隣の家のキッチンに残してきた、夕飯になる予定だったものは大丈夫だろうか?

料理というには拙い温野菜のサラダとチキンスープと、白いご飯。それから、昨日買いだめをした食材たち。
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