冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
このピカピカに掃除が行き届いた綺麗な家を見たらわかる。
バスルームも高級ホテルか、それ以上か? というほどに美しく清掃され、整理整頓がなされていた。きっと相当な凄腕ハウスキーパーを雇っているに違いない。

「できればその方が来ない日にでも、三並さんを……櫻衣家でハウスキーパーをしてくれている方を、呼ばせてもらえませんか?」

私の問いに彼は首を左右に振ってから、持っていたボウルをベッドサイドにあるテーブルへ置く。

「ハウスキーパーは呼ばない主義なんだ。幼い頃から積み重ねられてきた家政婦への不信感が、今だにぬぐえなくてな。一人暮らしを始めてからは、家に人を入れないようにしている」

彼は、この家に俺以外で足を踏み入れたのは君ただひとりだ、と続けた。
その答えに、私は目を丸くする。

あんなに女性にモテモテだったのに、誰も家に入れてないってこと?
……って、驚くところはそこじゃない。

「ということは、この家の掃除は宗鷹さんが?」

「そうだが。何か問題が?」

問題はない。ただ、プロのハウスキーパーをも凌ぐ腕前に驚きを隠せないだけだ。

アパレル業界最大手の企業を経営する菊永家の御曹司で、毎日仕事で忙しくしている取締役副社長なのに、こんなに完璧な家事をしているなんて……一体いつ寝ているのだろうか。
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