冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「料理も自分でした方が思い通りになっていい。味付けにも好みがあるし、勉強さえすれば細かい健康管理もできる」

「そう、でしたか」

私が抱いていた第一印象も、あながち間違いではなかったらしい。
以前、というか先ほどまでは、まるで冷酷な皇帝のごとく崇高で近寄り難い印象を覚えていたが、そのルックスを裏切らず、その実、相当な完璧主義者なのだろう。

「残念だが、君の家のハウスキーパーを呼ぶのも諦めてくれ。家事は俺が担当するから問題ないだろう」

確かに、私の初級とも言えない家事技術じゃ、足手まといになるかもしれない。
だからと言って任せきりにするなんて、そんなの悪いし……。

「私にも、家事をお手伝いさせてください。できる限りのことはやります。それ以上も、頑張りますので。もし時間がある時があれば、いちから家事を教えてもらえませんか?」

「そうは言ってもな。君が幼い頃から体が弱いのは知っているし、ご両親が君をできるだけ水回りに触れさせないようにして育ててきたのも聞いている」

それに、と彼は言い募って、ボウルの中で揺蕩う白いタオルを手に取り、両手で固めに絞った。
ぱしゃりと水面に大粒の雫が落ちていく。
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