こんぺいとう
ガラス玉
私はとても臆病だと思う

私には気になっている人がいる

その人はいつも輝いていて太陽みたいな存在

だけど私は影

気づかれなくてどこにあっても当たり前なもの

私の場合はなくてもいいのか

その人が一等星なら私は遠く離れた場所にある小さな星

あなたの光に消されてしまう輝きの薄い星

でも今はこれで満足している

同じ空間にいるというだけで…



「紗保ー!もう!ちゃんと聞いてた!?」

太陽にみとれて話は入ってこなかった

「見とれちゃうくらい好きなら告白しちゃえば」

---無理だよ。住んでいる世界が違うから

「またそんなこと言って、同じだから大丈夫だよ」

---そんなわけない。とても遠いところにいる

「気にしすぎなんだって。ってかやる前にできないとか言わないの!」

---できるわけないよ。名前だって覚えてもらっているかわからないのに



そう、世界が違う

理屈じゃなくて感覚でそう思う

教室という世界から出てしまえばすぐわかる

あの人にとって私は、ただの景色の一部

だから同じ世界に住んでいるとは思えない

ほら、今だって気づかれていない

当たり前だよ、広い世界では私は空気

たとえあなたの前を歩いていても…



「紗保ちゃん、落し物」

この声はもしかして…

ダメダメ騙されちゃ、そんなわけないんだから

私が聞き間違えただけ

「紗保ちゃんーおーい」

だから紗保ちゃん早く気づいてあげなよ!

…あれ?紗保ちゃんって私…?

なんで私の名前知ってるの?

「やっと止まってくれた。これ、スマホにつけてたやつでしょ」

目の前の人が差し出してるのは紛れもなく私のもの

「直してあげるからスマホ貸して?」

スマホを素直に差し出す私…

そもそもどうして私のスマホについていることを知ってるの!?

「はい、これで取れないと思うよ」

えーとお礼言わなきゃ、というか一言もしゃべれてない…

「あ、ありがとうございます…」

心臓の音止まってよ

「好きだなー」

は、はい?なんの話!?

「このガラス玉綺麗だよね。すごく好きだよ」

なに勘違いしてるの、ばかだなぁ

「わ、私も好きです…」

クスッと目の前で笑われる

「そういえば紗保ちゃんの連絡先聞いていい?」

「は、はい!喜んで」



こういう奇跡もあるみたい

私の本当の恋はここから始まる

これからもあなたのこと、好きでいてもいいですか?

少しずつ光り始める

このガラス玉のように…




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