いつか、泣きたくなるほど大好きなキミが
いつか、泣きたくなるほど大好きなキミが



茜色の空は私の帰路を照らし、意味もなく泣きたくなるような、切ない雰囲気を醸し出している。



「それじゃ、また明日」



今日、珍しく帰宅部の私の帰りが、少し遅くなったのには、大した理由も無かった。

ただ、友人たちと教室で談笑していただけ。

それだけのよく有りがちなこと。

大したことではなかったのに、何故だか盛り上がってしまった。

ようやく1人になった私は、いつもルーティンとして、音楽を聴きながら歩く。

イヤホンをしっかりと、はめて。

そして、間もなくそこから流れてくるのは、ジャズ。

たった今、流れて始めたその曲の出だしだけを聴けば、私には何の曲だか直ぐに分かる。



「お。なかなか良い選曲だね、君」



1曲目からセンスの優れた、我がスマホを褒める。

私は、絶対に自分で曲を選ばない。

ランダム再生の機能に、全て任せる。

しかし「ランダムに」なんて言っても結局は私自身が選りすぐって、スマホに取り込んでいるため、どれも私の耳にはよく馴染んだ音と曲ばかりだ。

しかも、今、流れている音楽を奏でているのは、実は叔父と叔父の知り合いの人たちと、私。

曲も知り合いの人が作曲してくれた、オリジナル。

だから、パッと聴いて、曲名を当てることが出来る人なんて、まず居ないだろう。

曲の冒頭で控えめにシンバルを「チキチキチキチキ……」と鳴らしていたドラムは、徐々に弾み出し、他の楽器たちをリードしていく。

そして、ドラムの奏でるリズムに乗っかっていく「私」のピアノ。

縁の下で支えているにも関わらず、どこか際立ってしまう秀逸な叔父のベース。

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