返シテクダサイ《都市伝説》




病院は閉鎖してもう数十年、背の高い門は比較的出入りがあるからだろう、大丈夫だったが、壁の至るところに雑草が這い回り、病院を飲み込もうとその手を伸ばしていた。


入り口は膝ほどまである長い雑草に辺りを覆われて入り込むのにも一苦労だ。


その雑草を上から踏んで歩いていったのだろうか、薙ぎ倒された雑草が一本の道を作っているのが幸いといえよう。



「これだけ雑草が踏まれてるって事は、需要高いんだね」



病院の全体と、入り口付近をカメラで映しながら晴彦はそう呟いて、すぐに羽山へとカメラを向けた。



「じゃ、羽山リーダーお願いします!」



「ぅえ!?…お、おう、任しとけ!」



言いながら羽山はまさか自分が先陣を切って乗り込んでいくとは思っていなかったのか、変な声を上げながらギクシャクとした動きで錆びて歪な音を立てる門を開くとなぎ倒された雑草の上を歩いていった。


その後ろで晴彦は俺に悪戯っ子のような目配せをして、羽山の後ろを付いていった。


まったく、腹黒い男だ。


俺はそんな晴彦の背中を眺めながら開いた門の隙間から敷地内へと乗り込んだ。


病院の裏口まではそう遠くはなく、すぐに俺は二人に追いつくことが出来た。距離にして10mほどだろうか。


裏口の扉の前に立って、羽山が扉を開こうとした時、俺は何気なく後ろを振り返った。



「………」



閉めた覚えの無い、門が閉まっている。


風で閉まったのだろうか。音もなく。


微かな違和感は、中へと向かう二人の友人の呼び声にかき消され、俺は曖昧に返事を返すと病院の中へと進んでいった。









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