クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 しかしそうすればそうするほど反発は大きくなるばかりだ。度々繰り返される市民蜂起の鎮圧には、担当地区の兵士だけでなく王立騎士団の騎士も駆り出される。騎士は君主に絶対の忠誠を誓うものだから、問答無用に王命のままに動くしかない。
 国王の側近で従者たちのまとめ役となるべき宰相は、カルロスがまだ王弟だった時代から私設秘書官を務めていたエルディーという男だ。
 このエルディーもいまいち頼りにならない。真面目ではあるが、ただ行儀よく王の話をはいはい聞いているだけの、せいぜい書記官クラスの立場といっていい。判断を見誤っている王を諌めることもできなければ、何かしらの知略に富んでいるわけでもなかった。
 王がエルディーを宰相に任命したのは、単に面倒なことを避けるために都合がいい人材だったからだろうと容易に想像がつく。
 いくら騎士が勃発しているレジスタンスの暴動の鎮圧をこなし報告をしたとしても、先ほどのような無意味なやりとりが繰り返され、いたちごっこをするしかない。騎士団の士気もすっかり下がってきてしまっている。そのことに、ランベールはつよい危機感を抱いていた。
(先代の崩御さえなければ……)
 ランベールは度々そう思う。しかしそう嘆いたところで、亡くなった王は戻ってはこない。
 この一連の悪循環を断つ術はないだろうか。問題を先延ばしにしたら、この国は一体どうなってしまうのだろうか。本当にこの国王に国を任せていていいのだろうか。
 騎士団の任務から戻るたびに、ランベールは疑念を募らせていたのだった。
「ところでランベールよ。最近のレティシア の様子はどうじゃ」
 面を上げることを許され、ランベールは王の問いに答える。
「とくに変わったことはございません。いつもどおり健やかに過ごされております」
 レティシアは、今は亡き先代の王の一人娘だ。カルロスは兄である先代の代わりに彼女の面倒を見ているのだ。
「それはよい。レティシアは好奇心旺盛であるからな。先代の崩御以来、落ち込んでいた王女には、あまり余計な心配をかけたくはないからの」
 国王はしきりに王女のことを気にかける。しかしそれは、叔父としての父性でもなければ、現国王としての優しさでもない、とランベールは悟っている。
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