クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
▼タイトル
私だけの騎士様 ~太陽の王と花嫁の誓い~(仮)

▼著者名
立花実咲 

▼節タイトル
□序章 ~プロローグ~

▼本文
(いつからこの国は変わってしまったのか)
 謁見の間――玉座に腰かける国王カルロスに対し忠誠の姿勢を示すべく、膝をつき頭を垂れながらも、騎士は王への疑問を抱かずにはいられなかった。
 その騎士とは、王女の護衛を任されている王立騎士団第二騎士隊長、ランベール・グリエットである。
「騎士団の報告に上がった地域だけでなく、大臣によると、その他にも市民が各地で蜂起しているようですが……」
 王側近の宰相がとりまとめようとすれば、
「なに、いつものように鎮圧すればよいだけじゃ。横暴な民草の言い分に、聞く耳をもってはならん。毅然と対応せよ。この平和な国に刺激が足りないというだけの我儘なレジスタンスじゃ」
 ……と、国王カルロスはまったく取り合わない。
 書類にすら一切目を通していないのではないだろうか。その場にいた皆の表情からは国王の見解には納得していない者が多いことは一目瞭然だった。
 しかし国王の濁った目には他者の様子など映っていないようだ。或いは、お得意の見てみぬふり、という業(わざ) だ。
 ひと月前に比べ、王の体はひと回りくらいふくよかになったようだ。玉座が大層窮屈に見える。さらに、でっぷりと弛んだ下顎を隠すためなのか、白い髭がだらしなく伸びている気がする。
 王には立派な髭がステータスと思っている節があるようだ。立派かどうかはさておき、見た目だけでもずいぶん贅沢な生活をしているということは判る。
 国王の良いところは人当たりのいい性格であったはずだが、如何せん悪い部分が目立ちすぎて、この頃それすらも目につくようになってしまった。
 グランディアス王国の王は現在、風光明媚な中央の国らしく、平和主義を貫く姿勢を見せているが、実際はそんな美しいものではない。
 王は資金難をおそれるあまりに必要な戦いをせず、諸国との友好的な同盟を断り、国内の資源をあるだけ貪り続け、ただ私腹を肥やすだけの愚鈍な独裁者に成り下がっていた。
 そのことに市民が気づきはじめているとは考えもせず、立ち上がった市井の英雄が反旗を翻そうものなら、ただ圧力をかけて、その事実をもみ消すだけだった。
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