ボーダーライン。Neo【中】
「幾ら、払えばいいですか?」
「ヒノキ!」
カイが慌てて口を挟んだ。
「とりあえず、三百万だ」
カサイは指を三本立て、平然と言った。
「さッ??!」
ーーそんなに!?
「……何だよ? 持ってるだろ、それぐらい」
僕は苦々しく口を結ぶ。
「これでもな。俺は良心的に言ってるんだ」
カサイの口調が急に情を帯び、眉をひそめた。
「今からざっと、六年ぐらい前になるのか? 当時。生徒の分際で、教師をしていた幸子と付き合っただろう?」
「……そ、れは」
「別に今、その事実を責めようとかそういうんじゃない。
俺が言いたいのは、これをマスコミが知ったらどうなるかって事だ。
お前らの過去なんてな、知ってる奴は山ほどいるんだ。六年前の十月、西綾高校の体育館……と言えば分かるよな?」
「……ああ」
一体どこまで調べているのだろう。興信所にでも頼んだのか?
僕はうんざりした気持ちで地を見つめた。
「だからとりあえず三百万。一週間以内に振り込め」
そう言ってカサイは口座番号のメモを再び差し出し、今度ばかりは素直に受け取った。
「……そのお金の内訳に。結婚式のキャンセル料が含まれてますよね?」
ーーえ?
慌ててカサイを見ると、僅かに目を見開き口元をグッと引き結んでいた。