ボーダーライン。Neo【中】
透さんは車で来ていたので、飲み物はウーロン茶だ。
「ですよねぇ」
逆に僕はカイの部屋に泊まる気なので、珍しくビールを飲んでいる。
料理に箸を付けながら、合間でグラスを傾ける。この何とも言えぬ、麦芽の喉越しが堪らない。
「この際、カイはその才能を生かして店出すってのはどうだ? 小料理店みたいなさ?」
「はい??」
「ほら、近々FAVORITEが活動休止になっても良いように」
得意満面な笑顔で、透さんはグーサインを向けた。
「透さん。勝手にウチを活動休止にしないで下さい」
僕はグラスを置き、正面の彼を一睨みする。
「ついこの間まで海外行くって張り切ってたのはどこのどいつだ~?」
「そ、れは……」
「誰が何と言って止めようが、俺は行くぜって雰囲気、満々だったよなぁ??」
そう言われると、もうぐうの音も出ない。僕は恥ずかしさに俯いた。
「動機が不純でも。檜が‘行かない’って言ってくれて、俺は嬉しいけどな?」
そこで陸が口を挟んだ。
「檜のワンマンプレーは昔っからだけど。さすがに今回は焦った。何の為のデビュー曲だよって、過去振り返ったし」
「……陸」
「ほんまほんま。カイからあの話を聞かされた時は、ここで終わりかよって本気で悩んだよな?」