世界一運の悪い女
「いいわよ。手紙?プレゼント?なんでも受け取ってあげるわ」

そういうと、彼はびっくりする。
眼鏡の奥から、わたしが居心地悪くなるほど、わたしを見た。
彼は驚きながらも、胸ポケットから取り出した小さな封筒を、わたしは奪うようにして預かった。
それは皺が寄っていたが、ピンクのさくらの散らばる綺麗な封筒だった。
さくらは、わたしの名前である。
姉への手紙にさくらの封筒を選ぶところは、頭がいい男だろうに、なんだか残念な気がした。

「名前はちゃんと書いてあるのでしょうね?」
「書いている。読んでくれたらイエスでもノーでも、必ず返事が欲しいんだ」
わたしは、なんだか姉に渡すことを信用されてないような気がして、こころなしかむっとする。
「手紙を読んで、返事をするかどうかなんてわからないから約束できない。だから、返事は直接聞いて?」

わたしは言う。
何か言いたそうに開く口。
だが、わたしはもう十分足止めされてしまった。
陸上部の練習が始まる時間だった。

4日もたったころ、彼はまた同じところで会う。
今度は練習を終えた時間だった。
あきらかにわたしを待ち伏せしていたのだった。

彼の存在を全く忘れていたことが不思議なほどだった。
それと同時に、先日頼まれごとをしていたことを思い出した。

「返事をもらいにきたんだ。付き合ってもらえるのかどうなのか。僕の気持ちを伝えた手紙を読んでくれているのならば、、、」

意を決したように彼は言う。
期待を込めた目で見られてしまう。
冷たく心臓が打ち始めた。

わたしは青くなった。



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