世界一運の悪い女
わたしはぶつけられる熱い想いに、心臓の音で耳が聞こえなくなると思えた。これは、愛の告白ではないか。

初めてだった。
好かれ、求められるのはいつも姉だった。
わたしなど好きになってくれる人など、一生誰もいないと思っていたのだ。

そんな、予想もつかない展開にわたしはパニックになった。
だから、やれることはただひとつしかないではないか。

走ること。
走って走ってこの場から、彼から逃げること。

そして、走って逃げて、鞄の中に置き忘れてしまっていた自分への初めてのラブレターを読む?
さくらの封筒。
今ならわかる。
山吹さくらはわたしの名前。
わたし宛てのラブレターだったからだ。

学校から校門をでて、一気に駅まで走る。
クラブ活動を終えた後にもう一走りは辛かった。
だけど、勉強ばかりの彼には追い付けないはずである。
以前追い付けなかったと言っていたではないか。

駅の改札で、わたしは限界だった。


< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop