ビッチは夜を蹴り飛ばす。
 

 唇が離れて、綺麗な顔に至近距離で反応ひとつひとつを確かめられながらの行為に見ないでほしいってほんと思う。もう3、4回いってるのに硯くん一回もいってないし。意図せずぎう、って締め付けても何一つ変わらない表情をボヤけた目で眺めてたらゆっくりと引き抜かれた。


「鳴 後ろ向いて」

「…」

「体の向き変えて」


 動けないからそれを目で伝えたらため息まじりに体勢を変えてくれた。バック、ってこと。これ、もしかして。
 まってこわい、って初めての体位に怯えるまでにうつ伏せになった顔の横に硯くんが手をついて、息吐いて、って言われて言われるがままにしてたら中にまた一気に入ってくる。

 顔見えない、からかいつ来るかわかんないからかどうなのか。激しい抽挿に3回突かれていってしまって、霞んだ瞳がそれでもまだ足りないって求めてる。わかんないから確かめるため、後ろ手で硯くんの足に触れた。そのまま手を掴んだのか柔く握り返されると、動いたたま声が降ってくる。


「痛い?」

「、っ」

「これすき?」

「ぁ、っん」


 突如ちゅ、と背中に口付けられて飛び跳ねる。

 なに、って慌てて肩越しに振り向いたら硯くんににこりと微笑まれて、なにその笑顔めっちゃこわ、って思った矢先に腰から背中まで舌でつー、と舐めあげられてぅぁ、ぁっ! って全身に電流が駆け抜ける。

 そのまま頸椎をべろ、と舐められてから耳元に熱い息が吹きかかる。乱れすぎて衣服なんてもう意味を成さないのに中途半端にあるのがかえってやらしくて、律動しながら耳元で硯くんの淡い吐息が聞こえて切なくて愛おしくて壊れそう。


「っ…すず、くんっ」


 やばい、って声に出さなくても硯くんには伝わってる。そのままもう5、6回目の到達を果たしてそれでもまだ求めてる飢えた自分が獣みたいで、揺すられながら潤んだ瞳で肩越しに硯くんを見上げたら、いつもの何も見えない彼というよりか完全にあたしのこと欲しがってる男の人がそこにいて。



「悪いけど今日はもう意識飛んでも続けるから」



 可哀想にね、って前髪をかき上げて舌舐めずりをする彼に、あたしは恍惚とした表情で震えながらこくん、って頷いた。



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