ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「すず、くん大丈夫、」
「…ちょっと待って…」
「…うん」
あつ、って霞んだ目に横から至近距離で捉えられてその目が熱のせいで泣いてるみたいだったからちゅ、と頬に口付けた。でもそのうち硯くんがやばい、あつい、しぬ、と朦朧とした意識で気もそぞろに言うからやっぱやめよう、って肩を押すのに退いてくれない。やっぱりだ。あたしのせいだ。
あたしは何をやってんだ。
「…めい?」
「…下手かもだけど、硯くん楽出来る方法ある、」
「ん…?」
目で恐る恐る伝えたらその惑いをたぶん察したみたいで、汗を浮かべていた硯くんが霞んだ目で少しだけ微笑んだ。で、いーよ、って口遊む。
「上、乗って。うごいて」
「ぁ、やっ」
繋がったまま体勢を変えられて硯くんが下に来てあたしが跨るようになる。なんで抜かずにそうした、って赤い目で睨んだけどすぐにそんなのは弾け飛んだ。いやもう、なんだこのすごい景色。
行為のせいではだけたパジャマから覗く硯くんの胸元が綺麗すぎて肝心なところは見えそうで見えないし、恍惚とした表情で顔を横に向けて熱い息を吐いてる硯くんの壮絶な色気にあてられて意識が飛び、そうになる。
ごく、って喉を鳴らしてそれでも動こうとしたらでもやっぱり感じるのはあたしばっかで、うう、って苦しくなりつつでも見たい、硯くんと自分の快楽どっち追えばいいの、と葛藤してたらふいにべっ、と横腹を掴まれた。
「ん、っなに!」
「…鳴…おれこれあんま好きじゃないかも…」
「え、」
「おれが犯されてるみたいな気分になる」
え、なんそれ、パワーワード過ぎん? とか鼻血噴き出しかけたらさらっと「重いし」って付け足されてがーんってなる。そのまま一旦どいて、と言われて渋々どいてあ、じゃあさよなら…ってベッドから降りようとしたら当然腕を掴んで組み敷かれた。
それで一思いに最奥まで挿入ってきてさっきのとは比べ物にならない圧迫感と、あえて抉るような内壁に当て擦る感覚にひぁ、あっ! って悲鳴があがって、薄く目を開いたら硯くんが満足そうに笑ってる。
「なに、っ、なんで笑っ」
「…いや? 悦んでんなと思って」
「ぃ、ちがっ、ぁ、んんっ…!」
口に置いた手も剥がされてベッドに縫い留められて、次々襲いかかる快楽に情けなく喘ぐことしか出来なくて。
果てる最後に溶けるようなキスを交わしたら、ぷつんと意識は事切れた。