ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「…え?」
「えじゃねーよ鳴がしたいっつったんじゃん」
「(咥えながら流暢に喋れんの器用)」
さすが硯くんやな、とこんな時でもリスペクトしてそのまま屈んでいたけれど、そうなるともうどうしたらいいかわからない。たぶんこのままの流れでいや、大丈夫でーすとか言いながら扉に向かったらその先に待ってるのがトニーだと知れたら間違いなく家に入れてくれないどころかリアルガチで殺されてしまうだろう。
だから、ってわけではないけれど、恐る恐る膝を立てて立ち上がって、硯くんの前に立つ。
で、ポッキーの持ち手の方を咥えて機嫌悪そうに見上げてくるからふは、って噴き出してしまった。
「は? お前自分の立場わかってんの」
「や、だって怒ってるのに硯くんやさしいから」
「…」
あたしには甘々なんだよ知らないの? って笑ったら不本意そうにしてる硯くんの肩に手を引っ掛けて、それからその足の間に軽く膝を引っ掛ける。それでぱく、って先を咥えたら硯くんの目線だけがあたしを捉えた。
…え、これこんなドキドキするもんなの、お遊びなんだと思ってた。
ぽき、ってひとつ硯くんが進んだだけで心臓が跳ねて思わず背中が反るのにく、て大きな手のひらで背中を支えられて逃げられないようにする。それでほんの少しだけ遠慮がちに進んだらまたぽき、って進んだ硯くんの顔がもう既に近いから無理だ、って頭を仰け反らせたら瞬間唇が奪われた。
いつもとは違う、噛みつくようなキス。口の中のどうしようって困って逃げるようにしたら余計求めるみたいに貪られて、顎を引いたら背中の手が下から頭の後ろを支えてあたしの芯を探り当てるようにキスをする。
そのまましばらくそうしてたから口の中もチョコもクッキーもどうなってしまったかわからなくて、ほぼ唇が引っ付いたままやっとキスから解放されたら硯くんの吐息に甘いチョコの香りがした。
酸欠で手足が少し痺れてる。もう既に肩を持てずにだらん、て手を下ろして硯くんの手だけで支えられてた状態で、霞んだ目でこく、って息を飲んだらいつもの無表情に射抜かれた。
「…鳴ん中おれの全部で犯したい」