ビッチは夜を蹴り飛ばす。
05.知ってることは知ってる人だけが知っていればいい
7月4日 クラス会。
カラオケとボーリングに行った!
お金は男子持ちだから女子はタダ、
やったね
7月7日 学校帰り、ともとゆきとモールの中の
大きな短冊にありもしない夢を書いた
ともはイケメン彼氏ができますように、
ゆきは王子様に出会えるようにだって、
変なの
7月10日 来週ともとゆきと新しく出来た
クレープ屋に行く約束をした、たのしみ
今日は金曜だからバスタブの中で
ゆきが眠れるまで話し相手して
そのあと硯くんとこに遊びに行こうかな
7月14日 昨夜身に覚えの無い
意味不明な写真が拡散されて
世界が180度変わった。
かったるいから
この日記は今日までとする
7月14日、何の変哲も無いあの日あたしは一度死んだのだ
「大変だったね」
「あたしじゃない」
「うん」
「硯くん信じるの?」
画像が拡散された日、自棄になって土砂降りに打たれた深夜2時、吸いもしない煙草の番号を叫んでレジカウンターをぶっ叩いたあたしに硯くんは落ち着いた動作でピッて42番のバーコードを読み取って、また渋いの選ぶねってチェーン付きのブルーレンズサングラスの中からあたしを見たのを忘れない。
「だってヤってないんでしょ」
「でもみんなあたしを疑うよ」
「おれはおれが見て聞いたものしか信じない」
ずぶ濡れになったカッターシャツの胸ポケット、その中にとん、て煙草の箱を押し込んだ硯くんは泣き腫らした赤い眼で睨むあたしに事もなげに首を傾けた。
「犯人見つけたらどーすんの轟木 鳴」
「金属バットでしこたま殴りつけて樹海にくくりつけてやる」