ビッチは夜を蹴り飛ばす。
08.死んだ目で安寧をぶら下げたろくでもない私たちへ
テーブル上をスマホが一人でにバイブする。横から伸びた手がそれを掠め取り、階段を降りたライヴハウスの暗がりに投げかけた。
「海塚さん」
「はーい」
「栃野から連絡が」
「栃野?」
真紅のソファに掛けたままの海塚にスマホを当てがうと、チェス盤に駒を置いた耳に男の情けない声がする。
「かっ、かいづかさ、かいづたすけ たすたすげでぐださいめが、めがっ、あ、あ、あ、」
「うーん」
「お前だれ?」
「ぇ、ちょ 待っかいづ」
「さーて」
ブツリと容赦なく切ったスマホを部屋の片隅にあった水槽の中に落下させる。ちょ、俺のスマホ、と嘆く仲間の声を背にその眼は愉しそうに微笑んだ。
「大団円といこうか」