ビッチは夜を蹴り飛ばす。
10.ビッチは夜を蹴り飛ばす。
 


《—————都立城南(じょうなん)高校の建造物損壊事件ですが、犯行に使われた道具のカラースプレーはネットで匿名で大量に購入されたもので捜査は難航している模様。
 都内では中国人観光客やフィリピン人による文化遺産などへの同種の悪戯が多発していることから、警察は事件に関連があるものとし、捜査を進めています———》







「ハワイ最高——————!」

 ラジオで南国音楽をマックス音量にオープンカーで風を受ける。
 左ハンドル技術をちゃっかり会得してチュッパチャッパスを口に含んだ硯くんがサングラスにアロハシャツを着てたらおのぼりさん感満載すぎて、だははって笑ったらお前もだろと冷ややかに告げられた。


「よーし! 轟木 鳴の人生セカンドシーズン in ハワイ到来だ!!」

「ふーんアメリカの永住権取得めっちゃむずいよ頑張って」

「硯くんは!?」

「おれは単なる人生の夏休みだから狙えなかったら日本帰ります」

「うええええええ!? やめてよ運命共同体!!」

「待て運転邪魔すんな」


 ぐいーっと頭を避けられてだはは、って笑ったらその笑い方なんなのって笑われた。
 夜に安堵して朝に怯えたあたしたちはもういない。太陽が照り付ける光の中、眩しすぎる陽射しにまだたまに目が眩むけど、とサングラスをかけたら硯くんから貰ったチュッパチャッパスを口に含む。



「そうだ鳴報告がある」

「ん?」



 信号待ちで硯くんがサングラスをずらして自分の足を二度叩き、あたしを見て上を指差す。一瞬その意味がわからなかったけど、理解したら赤面してうぇえええええええ!? って声が出た。





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