ボーダーライン。Neo【下】
『ううん、全然。お父さんは温和だからあれだけど。
お母さんは凄い怒るだろうなってあたしも心配してたのに。あなたの事、何にも訊かないの』
「そう、なんだ?」
事の意外さに、目を丸くする。
『それどころか、ちょっと変な事訊かれて。あ! って言っても。別に大した事じゃ無いんだけど』
「何だよ?」
『ううん、何でも無いから。忘れて?』
言いながら幸子は取り繕うが、僕は呆れて息をついた。
「やーくーそーく! 隠し事はしないって決めただろ?」
『…うん』
ごめんね、と幸子は愛嬌じみた。
『あんまり気にしないで欲しいんだけど。お母さんがね。帰って早々、葛西さんと会った? って変な事訊いたから。
あ、葛西さんって人は、あたしの前の、婚約者なんだけど……』
「あー……、うん」
僕は慌てて、首もとを掻いた。
『何かね。あたし達がロンドンにいる時、家に電話があったみたいで。
彼があたしに渡したい物が有るとか、そんな理由で』
「渡したい物って……荷物の事?」
『分かんない。何かでも、切羽詰まった様子だったってお母さん言ってて。
今海外にいるって言ったら帰国日を訊かれたから、空港と併せて教えたって。
あの時彼がその場にいたのかもしれないけど……あんな騒ぎじゃ、気付かないし。向こうも声掛けれないよね?』
彼女の言葉を聞き、僕は暫時、黙り込んだ。
ーー空港名と帰国日が漏れてた?