すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「歓迎は…されていないのかな」

案内された部屋で呟く。

「そうですか? 国王様とか優しげで歓迎していたようですけど」

タヤカウから共にやってきた侍女のサリが衣装の整理を行いながら呟きに応えてくる。

「いえ、キーマ様が……」

「あぁ…」

結局、一言も発言がなく、声さえも聞けなかった。

「表情も変える事無く無表情でしたねぇ」

ユナの後ろで近衛の騎士と共に従事していたサリも苦笑しながら呟く。

「せっかく気合い入れて姫様に化粧を施しましたのにー」

と別のとこで憤慨しているのを見てクスリと笑う。

「歓迎の晩餐ではまた気合い入れて整えますからね。姫様の美しさを見せつけないとっ」

先程から衣装の整理をしているのはその為かと思いながら、ユナは小さく息をつく。

母国の正装は砂漠の気候に合わせての衣装。

暑さを逃すために肌の露出が多く、風通しの良い薄布を重ねて、直射日光から守るためにベールを頭からすっぽりと被る。

対面の挨拶でも『タヤカウ大国から来た姫君』というカタチをしっかり保つために母国の正装で臨んだのだが…。

「サリ、晩餐会にはこちらの国の衣装で出てはいけないかしら」

「それもいいですねぇ。姫様の容姿でしたらきっとお似合いですよ」

にっこりと笑みが返ってきてほっと安堵の息を吐いた。
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