すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「…ユナには内緒でどうにかしようと思ってたんだけど、身内になることだし協力してもらえるかな」

「協力?」

「以前、シーラが図書館でナンパされているのを見かけてね」

「そんなことあったかしら?」

「笑顔ひとつで『婚約者が何をしても知りませんよ』と軽く流したのを見て、強かさを感じだ」

「! 見られてたのですね…」

「確かに、今の私だったら、何するか分からないねぇ」

思い出して慌てるユナを見てくすくすと笑みをこぼす。

あの時の毅然とした態度を見て、守られるだけのお姫様ではないと確信したのだ。

「国の内政の権力構図にかかわることなんだけどね…」

笑いを収めると、そんな前置きをして話し出した。

ユナも自国での内情関係に関わっていたせいか、よくある事ねと簡単な説明で理解をしていく。

「政務の高官の中にいろんな派閥がいてね、王太子妃の父である財務官長、それに対抗するように外務長官がいるんだよ」

娘であるヨウネを次期王に嫁がせた財務長官の方が、今のところ権力的に優位になっているという。

もともと二人は幼馴染で恋愛結婚だ。

財務長官自身は、野心はなく真面目な人柄だ。

「対抗している外務長官がユナを利用しようとしている」

「わたし?」

「婚約の話はタヤカウとウチの国王同士の話で決まったことなので、外務長官の手柄でも何でもないが、この国が忙しい時期に来国が決まったのも思惑が働いたからと、私たちは見ている」

「思惑って?」
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