心の鍵はここにある

 直先輩が引退してからは、先輩に補習があったり下校時間も合わなくて、別々に帰宅する日もあったけど、曜日を合わせて一緒に帰宅して、お付き合いは順調だとアピールしていた。
 そして今日は、久しぶりに直先輩と彩奈先輩も部活に参加していた。
 部員の練習中に、部員の水分補給の為に学校の冷蔵庫で朝一番に作っていた麦茶を取りに、家庭科室へと向かった。

 本日練習に参加している男女合わせて部員十八名が飲む量のお茶だから、重さも量も半端じゃないので、さつきと二人で家庭科室へと向かう途中……。
 体育館裏に、直先輩と彩奈先輩がコソコソと移動して行くのを目撃した。
 さつきが最初に二人を発見した。

「ねえ、何であんなにコソコソしてるのかな? 気になるから後をつけてみようよ」

 好奇心旺盛なさつきの瞳はキラキラしている。
 直先輩と彩奈先輩は従兄妹同士だし、別に一緒にいておかしくないと思うけれど、何だか私は聞いてはいけない事じゃないかと言う直感が働いた。

「やめとこうよ、従兄妹同士で何か話があるのかもだし」

 私が軽く諌めると、さつきは反発した。

「でも、あれはどう見ても怪しいよ? 人目を避ける様にしてたじゃない。
 里美は直先輩の彼女でしょ? ほら、行くよ!」

 さつきは強引に私の腕を引き、体育館裏へと足音を忍ばせて向かった。
 さつきが先陣を切って体育館裏の物陰に隠れると、私を手招きした。
 先輩達の通った通路の逆側から回り込み、ちょうどそこには掃除道具を入れる倉庫があり、その影に隠れると、こちら側が風下だったみたいで、声が聞こえて来た。
 私達は顔を見合わせて頷いた。
 お互い物音を立てない様に気をつけながらしゃがみ込む。
 そして、二人で聞き耳を立てる。

「……だな。あいつら、その後はどうだ?
 まだ里美に嫌がらせとか仕掛けたりしてないか?」

 直先輩の声だ。
 私の心配をしていると言う事は、退部した二年生マネージャー三人の話だろうか。

「今の所、それはなさそうよ。きっとあの念書が効いたね。あれがなかったら、また里美ちゃんに嫌がらせしてる筈。
 でも、ホントあの子のおかげで助かったね。
 直が引退しても引き続きマネージャーやってくれると思わなかったから」

「ああ、確かに今の二年は助かるだろうな。思っていた以上に真面目な性格だから、あいつは」

「今はどうなの?」

「ああ、部活引退してからはなかなか会ってないな。下校時間が合わないのもあるし、里美は部活だし。何かあるのか?」

「んー。……ねえ、直。……ぶっちゃけ、里美ちゃんの事どう思ってるの?
 マネージャーをお願いする為に偽物の彼女にして守って来たじゃない。
 そろそろ、それ撤回して本当の彼女にしてもいいんじゃない?」

 彩奈先輩の言葉を聞いたさつきが驚いて私の方を見た。
 私は咄嗟にさつきの手を握る。
 思わず声が出そうになるのを必死で堪えながらもその場を離れられず、二人の会話を聞いた。
 そして、決定的な一言を耳にしてしまった。

「……里美だけは無理」

 そう言って直先輩は、その場を立ち去った様だ。
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