極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
穏やかな声でそう告げた千紘社長の視線が私に戻ってくるのと同時に、腰に手が回りぐいっと引き寄せられる。そのまま一度だけぎゅっと強く抱き締められたあと、すぐに身体を離された。

そして、千紘社長は高い背を少し屈めると、私の顔を真正面から見つめて微笑む。


「それじゃ、会議に行ってきます」

「は、はい。行ってらっしゃいませ」


突然抱き締められたことに動揺を隠せない私は、直立不動で固まってしまった。そんな私を見て千紘社長がくすっと小さく笑いをこぼす。


「ごめん、つい。ネクタイを直してくれた笹崎さんが可愛すぎて我慢ができなくなった。キスもしたいけどそれはさすがにやめておいて、大人しく会議に行ってくるよ」


手に持つ資料をひらひらと振ると、千紘社長は私に背を向けてドアノブに手をかけた。


「あっ、そうだ」


けれど、何かを思い出したのかピタリと動きを止めて、私を振り返る。


「明日は何か予定あるかな」

「明日ですか?」
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